2007年04月02日

杯の中の海

ご無沙汰しちまってんな。

いや、まだくたばっちゃいねぇんだ、がっかりさせちまってすまねぇな。

まぁ、何せ目だってアレやりましたコレやりました、ってのがねぇもんでな。
ニワトリとタマゴが先頭争いするみてぇなもんだが、どうにもこうにもネタがねぇもんはしょうがねぇやな。

で、海にも出ねぇで何やってんのかってぇと、まぁ例によって酒飲んでんだけどな。




---------------------------------------------------------

最近行きつけのバーで、酒を3杯飲んだ。

その酒の出て来方が、なんともいい具合だったんで忘れねぇように書き留めとこう。
(座ってすぐの「駆けつけ」的ギネスは省く)


その日の酒は、なんで帆船小説(オーブリーとかボライソーとかのヤツだよ)にはやたらとマディラワイン飲む場面が出てくんのか?って話から始まった。

まぁ、それは…ってんで、まずは1杯目を飲んでからってことになったんだな。

----------------------------------------------------------

◆1杯目:赤ワイン(ブルゴーニュ産、ピノ・ノワール使用?銘柄は忘れた。っつうかラベルが読めなかった)

最近、俺ゃあカパさんのマネして、ちょいとワインなんぞも飲んだりしてんだ。
が、何せワインってぇのは敷居が高ぇ…ように思っちまうわけよ、俺みてぇなビンボー人にゃあな。
やれブーケだのアロマだの、なんとかラ・トゥールとかソーヴィニヨンだとかってぇフランス語が、どうも俺の性に合わねぇのかもしれねぇが。

まぁ、そいつぁさておき、出された赤ワインは、明るい紅色といい香りといい、酸味とかすかな渋味といい、文句なく旨いシロモノだった。
発端はこの旨いワインだ。

我がイングランドのあるブリテン島は、地理的にいうと随分と緯度の高いとこに位置してんのは知ってるな?
海流だの季節風だののせいで、そうそう目だって寒かねぇが、そこいらへんの関係でブドウの栽培にゃあ向いてねぇ。
つまり、どういうことかってぇと、イングランドじゃあワインはつくれねぇから、ほぼ100%輸入モンってこった。
どこから輸入するかってぇと、こいつぁ必然的にドーバー海峡の向こう側、本場フランスに決まってるよな。

ところが困ったことにだ、イングランドとフランスってのはそうそう仲がいいわけじゃねぇ。
英仏百年戦争だの、もっと下るとナポレオン戦争だの、まぁ何かってぇとケンカ沙汰ぁ繰り返してきた間柄だ。
で、迷惑なことに戦争のたびにワインの輸入が止まっちまうわけよ。
禁輸措置ってヤツで、まぁ俺達みてぇな船乗りにとっちゃあ、密輸で儲ける好機到来ってなもんだが、そいつぁ置いといて、だ。

酒は飲みたし酒はなし。
さぁ困った、どうしようってお話よ。

----------------------------------------------------------

◆2杯目:シェリー(シェリーってからにはスペインはヘレス産。銘柄はやはり失念)

で、まぁどうしようったって欲しいもんはしょうがねぇんで、よそから輸入しようぜって話になるわけだ。
ところがこいつがなかなか難しい。
フランスに次ぐワインの産地と言やぁスペインだ。
イベリア半島からはるばると、船倉に積んで運んでくるんだが、こいつが一筋縄じゃあいかねぇ。

ワインってもんはえれぇデリケートな酒でな。
保存状態が悪いとみるみる味が変わっちまって、飲むに飲めねぇシロモノに成り果てちまう。
考えてもみろ。
蒸し暑くってしかも揺れる船倉は、コンディションとしちゃ最悪ってもんだろ。
かくしてせっかくのスペイン産の美酒は、イングランドに着く頃にゃすっかり台無しって寸法よ。

じゃ、どうするよってんで考えついたのがマディラやシェリーだったんだな。

マディラやシェリーは、「酒精強化ワイン」ってカテゴリーに分類される酒でな。
発酵・熟成がいい具合に進んでるとこへブランデーだとかをぶち込んで酒精を強化してあるわけよ(当然そこでワインとしての発酵・熟成は止まる)。
酒精が強化してあるから、船で揺られようが多少蒸し暑かろうが平気だ。
おまけに逆に、船倉の高温だの揺れだのに晒される事でべつな熟成が進んで、こいつぁかえって旨ぇじゃねぇかって事になった。

そんなこんなで、いつしか船に載せるワインと言やぁマディラやらシェリーって事になったわけだ。

---------------------------------------------------------

◆3杯目:King's Ransom(ブレンデッドスコッチ)

さて、そういうような事情でもって、我がイングランドはシェリーをどんどん輸入した。
スペイン人もラテン気質のせいか知らねぇが、どんどんシェリーを輸出した。

余談ながら、かつてのイベリア半島はうっそうとしたオークの森に覆われてたらしいが、俺達の時代にはりきってばかすかガレオンこさえたり、こんな調子で酒樽にしてがんがん輸出しちまったりしたせいで、オークの森はすっかり消え失せた。
21世紀を迎えた現在、イベリア半島と言やぁどこか荒涼と乾いた風景が広がってんだが、言ってみりゃ連中は豊かなオークの森と引き換えに世界へ出て行ったわけだな。

まぁ、そいつぁそれとして、どんどん取引されるシェリーだ。
後には何が残ると思う?

山のようなシェリーの空き樽だ。

我がイングランドのあるブリテン島は、さっきも書いたが、緯度のせいもあって森林資源に乏しい。
ナポレオン戦争の頃なんざぁ、そのせいで船の建造でフランスに随分水をあけられちまったくれぇだ。

せっかくある空き樽を、捨てちまうわけがねぇんだな。
もちろん使う。
モルトだのなんだのをどんどん詰めた。

かくして世に言う「シェリーカスクのモルト」が誕生した。

今でこそ自慢げにシェリーカスクでござい、って具合に宣伝してんだが、元々は廃品利用に過ぎなかったってわけだ。


前置きが長くなったが、そこで昨日の締めの一杯だ。

200704012202000.jpg

King's Ransomってぇブレンデッドウィスキー。
1940年代のボトリングで、中の原酒は1930年代の酒だ。

King's Ransomってのは、訳すと「王の身代金」。
名前の由来は知らんが、こいつぁ締めにふさわしい、ちょいと面白ぇ逸話のある酒なんだ。

さっきの話の続きだが、マディラやらシェリーやらでみたように、アルコール度数の高ぇ酒を船に積んであちこち持ってって帰ってくると、何か知らんが熟成が進んで旨くなるってことが分かってたわけだな。

そこでこの酒は、原酒をブレンダーがブレンドした後、またシェリー樽へ詰めなおして、船に載せて、世界一周させたってぇ酒なのさ。
ケータイの写真が悪くて済まねぇが、ラベルんとこに「ROUND THE WORLD」って書いてあるだろ?

半世紀以上前の酒で結構な値段もするもんで、ハーフショットだけもらったが、シェリーカスク独特のふわりと甘い香りと、舌にまるい何ともいえねぇ旨さのある酒だったぜ。

ことに、船話で飲み継いだ夜の締めくくりにゃ、ふさわしい一杯だった。

---------------------------------------------------------

さて、そんなわけで、帆船小説に出てくるマディラワインをふりだしに、こんな話をしながら旨い酒に酔っ払って、いい気分で家へ帰ったのさ。


近所に住んでるヤツ、遠くに住んでるけど興味のあるヤツ、今度ぁお前ぇさん達も一緒に行ってみねぇか?
posted by ブリアレオス at 15:35| Comment(1) | TrackBack(0) | 航海日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは、ランゾです。
楽しそうなお店ですねえ。

そうなんですよね、実はフランスワインを一番
買ってるのはイギリス人なんですよね(笑)

最近、自分がハマってるマディラやなんかも
すごいビンテージものがポルトガルではなく
ロンドンにあったりするという話ですし…。

そういうお話を聞きながら飲むと美味しく
お酒が飲めますよね。

そういうわけで、また池袋の例の店行き
ましょう。(結局それか・笑)




Posted by Ranzo at 2007年04月03日 15:00
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。