2006年10月16日

Shanghai Noon(Over the sea,from Skandinavia)

ゲートの兄ちゃんにキップもぎらせると、目の前には黄浦江。

黄浦江は、上海市街の東側をS字状に流れる長江の支流だ。
Sの字の尻尾から逆にずーっと流れ下って、2つ目のカーブの手前左岸に広がるのが有名な外灘。

Shanghai band.JPG

和平飯店やら中国銀行やら、オールド・シャンハイを象徴するクラシカルな洋風ビルディングが立ち並ぶ、いわば上海の「顔」だ。

この古めかしい一帯のちょうど対岸の浦東地区は、対照的に急激に開発が進み、超高層ビルがどんどん建ってる。
これも上海のもってる別の「顔」ってことだよな。

そんな黄浦江に係留された北欧よりの使者イェーテボリ号。
いよいよご対面だ。


イェーテボリ号は、前にも書いたかもしれねぇが、1783年建造のスウェーデン東インド会社所属の商船だった。
1745年、3度目の中国航路もゴール間近の母港付近で浅瀬に座礁しちまった。
茶やら陶磁器やら絹やらを満載したままイェーテボリ号は沈没。
もったいねぇ話だよな。

だが、世に酔狂な野郎は尽きねぇもんだ。
このイェーテボリ号を復元して、実際に中国まで帆走させようってぇ途方もねぇホラ話を思いついたヤツがいたんだな。
で、まぁノリノリで「スウェーデン東インド会社」なんてカイシャまでこさえて、資金調達に走り回り、ついにイェーテボリ号を復元しちまったんだ。

色々と紆余曲折あったんだろうが、ともかく復元なったイェーテボリ号は、今実際に俺達の目の前に錨を下ろしてた。
(写真みると、右舷側の錨は下りてねぇなぁ…)

Goteborg.JPG

やたらめったら旗とか立てんじゃねぇ!
船体が見えねぇじゃねぇか、と関係者片っ端からバックドロップで黄浦江に沈めてぇ衝動に駆られながら、乗船口へと歩を進める。

Goteborg02.JPG

後部甲板には、日よけのシートがかかってる。
実際にもインド洋あたりじゃこんな具合に暑さをしのいだんだろな。
岸壁から渡された板を渡って乗船。
この日の上海は晴れ空の下やや暑かったが、シートの下はいい具合に風が吹き込んで、少しだけ涼しかった。

Goteborg03.JPG

船体中央方向から見上げるミズンマスト。
船底まで貫いて立てられたロワーマストに、トップマストを継いでるのがよく分かるだろ。
(メインマストなんか、さらにもう一本継いである)
で、それぞれ倒れちまわねぇように、静索でがっちり固定するわけだな。
そこへ、横へ張り出すヤードを吊り下げて、動索引いて風の受け方を調整することで、はじめて帆船は動力を得るって寸法よ。

Goteborg04.JPG

キャプスタンとノルマン女。
この横木に取り付いてゴリゴリ回すことで、錨やなんかを上げ下ろしする。
全部人力でやるってぇのは、大変なことだぜ、実際。

後方には舵輪(壁と屋根つきで快適操舵)があって、その後方は上級船員用居室だと思うぜ。

Goteborg05.JPG

こいつは動索を固定しとくビレイピンだ。
ぐるぐる八の字に動索を巻きつけて固定する。
で、いざって時にはピンを引っこ抜けば、動索の固定は一気に解除されるわけだな。

Goteborg06.JPG

こっちはマストの構造を支える静索。
腐食を防ぐ為にタールなんかが塗られてて、近くで見るとヌルヌルのテラテラだ。
通常マスト1本を左右5本とか6本くらいの静索で固定してあって(無論、縦方向にも固定するが)、その静索に横の足場をかけたハシゴ代わりのネットが段索(ラットリンとかラットラインとかいう)な。

Goteborg07.JPG

船体中央付近から、船首方向。
突き出してるのがバウスプリット。
途中から継いであるんだが、中心きっちりじゃなく右舷側に傾いて(軸はきっちり同軸になってるが)継いであるのが面白ぇ。
意外に左右対称じゃねぇんだ、これが。

写真掲載は割愛したが、この左側、一脚装備で気合入れて写真撮ってたじいさんの向こうに写ってるのは、シップベルの枠木。
最初の30分目に1回、次の30分目に2回…と鳴らし、当直の4時間(最後の当直だけは2時間)の間に8回鳴らす(八点鐘)のがルールだ。
だから、「〜直の何点鐘」といえば、だいたい何時くらいか分かるのさ。
砂時計しかなかった頃の船乗りの知恵だな。

Goteborg08.JPG

想像を絶する狭さと傾斜の昇降口。
身を折らないと確実に頭がぶつかるうえに、踏面はせいぜい15センチ足らずしかねぇ非人間的構造。
踏み外すと確実に死ぬ。
お年寄りは降りられずに迂回してたほどだ。

Goteborg11.JPG

一段下ると砲列甲板。
今は間にテーブル代わりの板が渡されて、ラウンジ化してる。
砲を突き出すガンベイ・ドアはクーラーのダクトを通す穴に流用されてた。
天井は低いが、アジア人が頭をぶつけるほどにゃ低かねぇ。
甲板をのし歩くノルマン人の末裔どもにゃあ、ちと低いかもしれねぇが。

Goteborg10.JPG

船首を横から。
錨と船首像が見える。
フォアマストが、けっこう前の方にあるのが印象的だった。

Goteborg09.JPG

船首方向から大雑把に全景。
岸壁に展開されてんのは、メインマストのヤードで、こいつがまたとてつもなく長い。
(メインマストには、ヤードがかかってないのが写真で分かるだろ?)
で、重そうだ。
ヘタな家の柱なんかよりよっぽどでかくて重そうなアレを、人力でマストに吊り下げるわけで、まさに重労働だぜ、帆船走らせるってのはよ。

Goteborg071.JPG

メインマストをのぼるノルマン女。
さすがに今風に安全ロープで身体を固定しながらの登攀だったが、大した身のこなしだったぜ。
ちょうどここから上んとこで、段索がオーバーハングしてるだろ。
熟練水夫はこのオーバーハングを登って見張台の外側を通るが、陸者や新入りはそのまま内側を登って見張台に開いた穴を通る。
で、その穴のことを「ラバーズホール」(臆病者の穴)と呼ぶんだな。

Goteborg12.JPG

帆を繕うノルマン女(メガネっ娘)。
ヘタなこと言うとハリ倒されそうなでけぇ姐さんが、うつむいてちくちくやってる様は、なかなかユーモラスだ。
いや、ホント、足でけぇんだ、ノルマン女。

Goteborg13.JPG

索具の手入れをするノルマン女。
やはりガッチリとしてよく働く。
船内で働いてるのはなぜか女ばっかりで、ノルマン野郎どもはラウンジでのんびり談笑してたような気がするぜ。


とまぁ、すげぇ人出に揉まれながらも、旅の目的のひとつであるイェーテボリ号視察は無事終了した。

なんでもイェーテボリ号、帰りの航行費用が日本円にして3000万円くらい足りねぇらしくってな。
今んとこ、今月26日までの公開予定なんだが、思うように資金が集まらなかったら、ひょっとすると公開延長なんてこともあるかもしれねぇ。

まぁ、なんだ。
確実に見ておきてぇヤツぁ腹決めて、今週末にでも上海へ飛べってことよ。


to be continued ...
posted by ブリアレオス at 12:39| Comment(2) | TrackBack(0) | 航海日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。お久しぶりです。とっても興味深いレポートをどうも有り難うございました。ゲームだけでなくリアルでもバイタリティ溢れる行動力ですねー!
今でもちゃんと帆船を動かせる人っているんですね。このイェーテボリ号は何人くらいで操船できるんでしょう。北欧の3本マスト横帆船=ピンネースかなw
写真を見るとロープがとても多いですね。水夫=ロープワークというのが頷けました。
よくこれだけの物を作って動かして、世界の海を行き来したもんだと思います。人間ってスゴイなぁ〜
Posted by イルリナ at 2006年10月17日 12:42
10代で中国行ったとき中国銀行のあたり歩いたよ。あのへんは中国よりも別の国に来た気がするよな。

ほいでイェーィテボリ号はすげぇな! これだけで浪漫がふくらもってもんや。11月はもっといっぱい写真みせておくれ(しかし実物はごっついロープの量よね。こんなん操縦してたんやから・・・)。
Posted by カパちゃん at 2006年10月19日 16:24
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