2005年07月28日

百本腕の航海士達(2)

さて、続きだな。

フランス・フランドルの仕立て屋の次男坊・トマはウチで縫帆手をやってる。
仕立て屋の息子だけあって、鼻筋のとおった顔立ちに小洒落た衣装がよく映える。
縫帆手は帆の修繕全般に責任をもつ役どころだ。
さすがに弾の飛び交う戦闘時にのんびり帆の繕いなんぞ出来ゃしねぇ。
そこは応急処置をやったりするんだが、トマの指揮でもって水夫どもがマストをのぼり、狭いヤードを走ったりして帆の張替えなんぞやってるところはなかなかの見ものだ。

船匠のアンリはトマの幼馴染で、こっちは桶屋の三男坊だ。
優男のトマとは正反対に、茶色い髪に目立たねぇ顔立ちの地味な印象の男だ。
二人してカレーで路頭に迷ってたのを、仕立て屋と桶屋の組み合わせが面白かったんで連れてきた。
桶も船も木で出来てて水につかるところは同じってんで、あっさり船匠の仕事に馴染んじまって、黙々と浸水止めたり穴塞いだり折れたヤードを架け替えたりしてる。
最近、「ペインター」ジョーはアンリの班へ編入になった。


ウチの船程度の規模じゃあ航海士なんつってもせいぜいこんなもんだ。
船医も居なけりゃ専門のコックも居ねぇ。
航海長にしても余計に人数は乗せられねぇんで、俺が兼任。
マスター&コマンダーってわけだな。

コック居ねぇから、メシは何人かずつのグループごとに当番決めて回りもちでこさえる。
航海士だろうが平水夫だろうがメニューは同じ。
無論俺のメシも同じ。
上から下まで、まさしく同じ釜のメシを食う。
よく言やぁ上下隔てがねぇ、悪く言やぁケジメのねぇ寄り合い所帯よ。
俺ゃあこういう呼吸が好きなのさ。

もし、海軍所属ってんで規律がどうとか抜かしやがったら?

そん時ゃ海賊にでもなるだろうぜ。
posted by ブリアレオス at 14:50| Comment(0) | TrackBack(0) | Story of Hecatoncheir | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月27日

百本腕の航海士達

今日から10日ほどの予定でPCを修理に出したんで、予備機で細々と更新。

一応この予備機でもEurosへ行けないわけじゃねぇんだが、やっぱり色々と不便があるんで本PC並にゃあ遊べねぇ。
そういう事情もあって、しばらく字ばっかりでタイムリーじゃねぇ更新が続いちまうんで先にお断りしとくぜ。

さて。

今日はウチの船の航海士どもについてって事でどうだ?
興味ねぇ?
そう言わねぇで聞いてやってくんな。
こんな機会でもなきゃ改まって紹介なんざ出来ねぇしよ。
身を削るように手持ちのネタ札をきってんだ、勘弁してやってくれよ。

ウチの船じゃあ平の水夫どもの上に、船の運用と経営をやる為の言ってみりゃ幹部級の船乗りが何人か乗ってる。
こいつらを、俺んとこじゃ「航海士」ってことで「水夫」とは区別してあるわけだな。
各々は俺がこれと見込んだ特技もちの船乗りで、その特技を生かして平の水夫どもを指揮する役目をもってる。

まず、一人目は副長のハンス
元々ドイツっぽらしいが、オヤジの代にイングランドへ帰化したんだそうだ。
無口でめったに笑うこともねぇんで、水夫どものウケは悪ぃ。
そのくせがっちり船内を掌握してて、補給物資の残数から水夫のケンカの件数まで、いつ聞かれてもきっちり答えられるし、ヤツの一睨みで水夫のケンカも止まっちまう。
えらくカンがよくってミスもヘマもしねぇんで、ウチの船で唯一俺のバックドロップを喰らったことがねぇって珍しい野郎だ。
俺が上陸してる時ゃ常に船の留守を預かってるせいで、ここへの出番はまだねぇ。

次、バーニィ
俺と同じロンドンの貧民窟出だ。
飄々とした細身の、いつも眠そうな目した野郎だ。
人あしらいが妙に達者なんで、水夫どものまとめ役をやってる(役割としちゃ「掌帆長」ってことになる)。
新入りに海と船のABCを教えるのもこいつの仕事だな。
俺に輪をかけてものぐさなところがあるヤツで、したがって決めたバックドロップも数知れねぇ。
付き合いは航海士の中じゃ一番古くて、俺が修道院からずらかった直後から俺の後ろを付いて回ってる腐れ縁だ。

スヴェンはスカンジナビア出身で、戦闘指揮(主に「掌砲長」)を担当してる。
金髪にヒゲにでかい図体と典型的デーン人そのまんまなヤツで、ロンドンの場末の食堂でボられそうになって派手にケンカしてるとこを、双方俺がぶん殴って連れてきた。
とにかくケンカと戦闘訓練ん時以外はやることがねぇんで、船首甲板でセイウチの牙削って船こさえたりしてる。
船内では、俺とやりあって一番長く持ちこたえられる(他のヤツは最初の一撃でノしちまうんだな)猛者だが、俺を負かした事ぁねぇ。
酢漬けニシンが好物だ。

おなじみのホセはイベリアの出で、ご存知のとおりソロバンが得意。
鼻メガネにソンブレロかぶった、サンチョ・パンサみてぇな小男だ。
ウチの船の財布を預けてあって、交易物資や補給物資の管理も担当する「主計長」が役割だ。
とにかく過去の記事で書いたようなヤツで、夢はダケットやらシャイロックみてぇな大商会の金庫番になることだそうだ。
上陸休暇ん時の女郎屋のツケから「ロンドン橋おちた」の弁償まで、とにかくウチで金にからむことには必ず一枚噛んで、とことんまで出費を削る手腕は、俺も実際舌を巻く。


…ってとこで続きはまた明日な。
posted by ブリアレオス at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | Story of Hecatoncheir | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月25日

Cross the Middle East

俺ゃあ、いたってズボラだ。
気の向かねぇ事についちゃあ指一本動かす気がねぇってヤツだ。

そこ、ホセにスヴェン、力いっぱいうなづいてんじゃねぇ。

今回みてぇに「PC不調」なんてうざってぇ事になると、ますますズボラの度合いがでかくなって、ロンドンからドーバー海峡渡ってくのも億劫になっちまうくれぇだ。
だんだん酒場ののんだくれみてぇになっちまって、なんともみっともねぇ。

せめてのんだくれだけは回避しようっつっても、ロンドンの町から出ずっぱりじゃ釣りぐらいしかやることもねぇ。

Free as a bird.JPG

カモメ撮るのに凝ってみたりなんかして…。


いかん。このままではいかん。

無理やりにでも理由こさえて海に出て、大洋の水でさび付いた心を研ぎなおさねぇと、俺ゃあこのままロンドンの雑踏に埋もれちまう。
停滞から躍動へ。
触れれば切れそうなほど手前ぇの感性と心を研ぎ澄ましてやるんだ。
のんべんだらりと潮風に吹かれて手前に進むだけじゃただの「船員」だ。
研ぎ澄ました手前ぇ自身でもって、行く手を切り拓いてこそ「船乗り」。

幸い、俺ゃあまだまだ船乗りだった。


よぉし、そいじゃ遠征だ野郎ども。
古びて穴のあいちまったバーヌース買いなおすついでに、中東あたりをとっくり見物してやろうじゃねぇか。
今度の航海は長ぇぞ、今のうちに故郷に手紙書いとけよ。
抜錨!舫いなんざぁブチ切っちまえ!
出航書類だ?んな物ぁ途中ですれ違う船に押しつけろ。
モタモタしてっとどてっ腹に錨をぶち込むぜ。


そんなこんなで俺ゃあアデンへやってきた。

Aden.JPG

何度か来てるが、このちょいとひなびた具合がいい。
調査やら海事やらの仕事を斡旋するギルドの番頭が常駐してるのを幸いに、俺ゃあしばらくここへ腰をすえる気になった。
さっそく調査仕事を貰いにギルドの番頭にかけあうと、よこしやがった仕事は史料の調査。
アケメネス朝のダレイオス帝について調べて来いときやがった。

ぐるりとアラビア半島をまわって、目指すはペルシャ湾の奥の奥。
ティグリスとユーフラテス注ぐバスラの町だ。

バカ狭いホルムズ海峡はいつ通っても最悪だ。
スキマ探すのが難しいくらいびっしりと、サラセンの海賊どもが浮いてる。
文字通り掻き分けるように海峡を突破し、さらに奥へ。
目に入るのは強い日差しに焼ける砂と、青い海と、そこに浮かぶクソッたれのサラセン人だけ。

道中の苦労がウソみてぇにあっさり情報を入手して、俺ゃあついに目的地へ到達した。

Persepolis.JPG

ペルセポリス遺跡だ。
ダレイオス帝が着工し、帝の死後も延々180年もかかってこさえたってぇ大した都の跡。
アレクサンドロスのバカが放火しやがったせいで今じゃこの有様、ここにゃ写ってねぇが、妙な連中の溜まり場に成り果てちまった。
真正面に写ってんのは、「雄牛とライオンのレリーフ」。
ぐるっと回り込んで階段のぼってくと、クセルクセス門なんかもあって、見ごたえ十分だ。

俺ゃあしばし遺跡に見入ってた。


と、思ったら探し物はこっちじゃなかったってオチなんだがな。



毎度お運びの皆様へのお知らせ
posted by ブリアレオス at 09:26| Comment(0) | TrackBack(0) | Episodes | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月21日

地中海にたゆたう

いつ落ちるか分かんねぇ電源のおかげでスッキリしねぇ今日この頃。
DELL屋のサポートがまた全然返事寄こさねぇもんで、どうにもこうにも。

やれやれ。

こんな時ゃ、リスクのでけぇドンパチはさすがに出来ねぇんで、おとなしくサルベージ業と趣味の考古学に勤しむことにした。
砲術班を束ねてるスヴェンのヤツぁ不満げだが、しょうがねぇだろ。
死人が出ねぇだけ上出来だと思って、しばらく辛抱してな。

そんなわけで、俺ゃナポリ界隈をうろついて当座のメシのタネを探すことになったわけだ。
書庫で埃くせぇ羊皮紙をパラパラやったり、出し渋りする冒険者ギルドの番頭の兄ちゃん締め上げたり、まぁ色々あんだろ。

いくつかめぼしいネタをつかんだら、あとは実行あるのみ。
穏やかな地中海をすべるように行き来して、今回の目玉、エジプトのファラオがらみの宝物探索にやってきた。

Sphynx.JPG

前にも来たとこだが、自力で来るってぇと感慨もまたひとしお。
見上げるスフィンクスもちょいと機嫌よさそうに見えるってもんよ。
目当ての宝物とやらは思ったほど大したもんでもなかったが、まぁそういうのはオマケだよな。

ヤッファの近所で考古学調査をこなして、地元のヒマ人どもの寄り集まってるカフェで休憩。

Men&Cat.JPG

むくつけきヒゲ野郎どもとネコ1匹の図。
posted by ブリアレオス at 18:04| Comment(4) | TrackBack(0) | Episodes | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月18日

続・停泊の戯言

こう頻繁に電源が謎のダウンを起こしてくれると、ちょいとおっかなくて遠征航海なんぞにゃ出られねぇ。
昨晩みてぇに起動するたびに落ちる有様じゃ、そこらまで航海しようって気も失せちまうってもんだ。

つまらん。

daybrake.JPG

埠頭に係留されたH.M.S.Kestrelの後部甲板に日よけと籐椅子を引っ張り出して、俺ゃあ昼寝を決め込んだ。
足は盥に張った水に自堕落に突っ込んで、たまに吹き抜けるそよ風が揺らす日よけの模様を見上げながらボケッとする。
ふ、と人の気配を感じてそっちへ首をひねると、ジョーがペンキのバケツと刷毛もって突っ立ってる。
よぉし、そうだぞ、昼寝してる俺にもペンキは塗らねぇでいい。
もちろん気に入りの籐椅子も勘弁しといてくれ。

っつーかバーニィ、いいかげんジョーにペンキ塗り以外の仕事をやれ。
次にジョーがペンキぶら下げて後部甲板ウロウロしてたら、手前ぇをバックドロップでマルセイユ港へ沈めるぜ?

さて。

昼寝しつつ、俺ゃあこないだの続きを考えてた。

イングランドに関して言えば、たぶん俺たちの航海してんのは1579年頃の海だ。
大分ムリはあるにせよ、まぁそこらへんだと思うんだな。

しかし、コメント欄にも書いたがどうもよその国がからむとムリを通り越してお手上げだ、実際。

例えばリスボン。
ポルトガル王国の首都たるリスボンにゃあ、バルトロメウ・ディアス提督が渋い顔して座ってるだろ。
ディアス提督は史実によると1488年にアフリカ喜望峰を回る大発見をやったあと、1500年ジャスト、インディアスからの帰りに難破してこの世を去った。
だいたい100年ほども前の人なんだな、これが。

ポルトガル王国がアフリカ周りのインド航路を開拓して、一番脂ののった時期がだいたい16世紀のあたまから前半分くらいまで。
ヤツらは大航海時代の門をこじ開けて、スタートダッシュを決めたわけだな。
偉大なる先駆者ってやつよ。

俺たち北方の島国に住むデーン人の末裔どもが世界の海へ乗り出し、じわじわとその覇権を奪っていくのは、先駆者たちに遅れること約100年も後のことだったのさ。
それは「大航海時代」も折り返し地点を過ぎた頃。
先陣きったポルトガル王国はスペインに併合されて姿を消し、そのスペイン大海上帝国をアルマダ海戦に破ってイングランドここにありを叫ぶのは、はるかに後年、1588年のこった。

インドへ、さらにモルッカへ、さらに先のチーナ(中国)へ。
世界の海上覇権を握ったのは俺たちイングランド人と新興勢力ネーデルラント人だった。
世界の海はくまなく探検され、「未知の領域」はどんどん消滅していく。
大航海時代の終わりはそんな具合にやってくる。

なるほど切ねぇ話だ。

ここはきっとそんな切ねぇ海じゃねぇんだな。
やがて必ず終わりの来ちまう切ねぇ「大航海時代」の海じゃねぇんだ。

俺ゃあ、とりあえずそう思うことにした。
偉大な先駆者どもも、遅れてやってくる冒険者たちも、等しく同じ時代に現れた、ここはそんな夢の中の海なんだ。
夢を見てる俺と、夢の中の俺が寝て見る夢の中の俺と、どっちが本当の俺なのか。

とりあえずどっちでもいいや。
こんなイカした海なんだ、夢でも何でもかまやしねぇ。

そんなとりとめのねぇ事を考えながら、まどろむ夏の午後だった。
posted by ブリアレオス at 15:59| Comment(2) | TrackBack(0) | Episodes | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月17日

最悪な日曜日

ここんとこ体調が悪ぃ。
冷房のせいだか疲労のせいだか知らねぇが、やたらと腹こわしてる。

おまけにPCもバカに調子悪ぃ。
いきなり前触れなしに電源が落ちる。
落ちるとしばらく起動も出来ねぇときやがる。
電源ユニットでもイカれたか、とにかく下る腹とこいつのおかげでマトモに海にも出られやしねぇ。

今日も最悪のタイミングで電源が落ちやがった。

大海戦の最終日、商会面子での参加めざしてマルセイユへ到着した俺。
腹下ること風の如しってわけで、中座して戻ってくるとPCの電源が落ちてる。
いつもの要領で、しばらくおいて電源再投入…OK。
さっそくDOLを起動…ぱひん。

落ちやがった。

くそったれDELLコンピュータめ…。
何度かやってみたが、PC起動後1分くれぇで落ちたり、同じくDOL起動までで力尽きる。
やっとこさまともに動いてDOLへ入れた瞬間、俺の耳に入ったのは、海戦終了の布告だった。

せっかくの商会艦隊での初参加、よりによって俺がぶち壊しにしちまって会わせる顔がねぇってのはこの事だ。
前々から挙動が怪しかったんだ、何か手うっとくべきだったよな。
あぁ、やれやれ。

みんな、すまねぇな。


ダメだ、こんな日は何やってもダメだ。
しこたま酒でも喰らって寝ちまうことにしよう。
posted by ブリアレオス at 23:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 航海日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月14日

海に棲む日々

蒸し暑い毎日、Eurosの潮風までベタついてる気がしちまうくれぇだが、元気で航海してるか?
こう蒸し暑いと、水っ気摂りすぎて腹は壊すわ、ちょいと油断してると食い物はカビちまうわ、思わずぶん回した冷房で思いっきり体調崩すわ、とにかくロクなことがねぇ。
まぁ、航海すんのも大事だが、身体壊してちゃ元も子もねぇんで、ちょいと気つけようってこったな。

さて。

このところ、来月あたまに新しく実装されるってぇフランスの王宮見物(このハゲはモンモランシー大元帥)に行ったり、

Montmorency.JPG

商会の連中に誘ってもらって艦隊戦訓練にカリブ合宿へ出かけたり、

rosesfleet2.JPG

まぁ、とりとめのない毎日を過ごしてる。
ちなみにカリブ合宿については、ウチのスティチんとこ参照な。

艦隊戦は面白ぇ。
面白ぇが難しい。
難しいが面白ぇ。

ここまで単艦主体で手前ぇ勝手にやってきたツケが回っちまって、ウチの連中の足引っ張っちまってんのがなんとも申し訳ねぇこった。
艦隊戦の面白さってのはなんてぇか、楽器の合奏みてぇなとこがあると思うのよ。
個々の技量ももちろんだが、全体がまとまって動きつつも機能を分担して戦う妙味。
5隻1組のユニットとして過不足なく動き、「負けねぇ戦い」を展開すること。

上手く機能したときの達成感は、単艦戦闘の比じゃあねぇ。
未経験なヤツぁ一度はやってみて損はねぇぞ。

今回は俺ゃあ準備不足も甚だしかったんで、商会の頭としちゃあ失格もいいとこだったわけだが、無理偏に「勝手気まま」と書いてブリアレオスと読む俺の生き様に免じて大目にみてやってくんな。
posted by ブリアレオス at 11:43| Comment(2) | TrackBack(0) | Episodes | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月13日

停泊の戯言

ふと気になった。

俺たちが航海してるこの海は、いったいいつの海なのか?

些細なこったし、別に知ったからってどうなるもんでもねぇ。
が、気になりだすと調べねぇと気がすまねぇってのが、俺って野郎の行動パターンだ。
さっそく調査してみよう。
インターネットってのは便利だよな。

まず最初のとっかかりは、女王陛下だ。

我らがイングランド王国のエリザベス1世陛下は、史実によると1558年に即位して1603年に死ぬまで王位にあった。
さらにロンドンとその周りにうろうろしてるイングランド王国のバイプレイヤー連中はどうかと見てみるに…。

・ジョン・ディー 1527年〜1608年
・トマス・グレシャム 1519年〜1579年
・ウィリアム・シェイクスピア 1564年〜1616年

女王陛下の即位期間と3人の寿命が重なってんのは1564年から1579年までの15年間。

ジェスチャー爺は女王陛下の別腹のねーちゃんの代にお抱えになってる上に女王陛下より長生きしてるんで、さらに絞り込むのにゃ使えねぇ。
グレシャムのハゲチョビも女王陛下のオヤジの代から財務官やってるが、年代の尻を割り出す以上の材料はもってねぇ。
次のとっかかりになりそうなのはシェイクスピアだな。

で、調べてみたんだが。
シェイクスピアのヤツがデビュー作「King Henry VI」を初演したのが1590年。
ハゲチョビがくたばった後じゃねぇか。
じゃあってんで、ヤツがロンドンへ出張って来た時期までさかのぼったが、1586年。
ダメだ。またハゲチョビが死んだ後だ。
これより前はヤツぁストラットフォード在住だったらしいが、しょうがねぇんでこれを曲げることにして…。

ところがだ。

これ以上に、スタートを特定する材料がねぇんで何とも言えねぇが、ハゲチョビのくたばる1579年、シェイクスピアは15歳。
ウチの「ペインター」ジョーくらいのガキだったことになっちまうんだな。

正直いってお手上げだ。
あっちを立てればこっちが立たねぇ。
シェイクスピアがすんげぇフケ顔で早熟の天才だったとしても、無理がある。

どだいこういうことすんのがヤボっちゃヤボなんだが、俺たちの航海する海は1579年「ごろ」としか言えねぇって結果になっちまった。

やれやれ。
posted by ブリアレオス at 18:07| Comment(4) | TrackBack(0) | Episodes | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月09日

ブリアレオス昔語り

俺の生まれ育ったなぁロンドンの貧民窟だった。

親父の顔は知らねぇ。
俺の生まれる前に海へ出たまま戻って来なかったらしい。
お袋も俺が5つの時に流行り病でくたばっちまった。

養い手がなかったんで教区の修道院へ預けられた。

丸顔の左頬に刀傷のあるペイリン修道士は、おっかねぇがいい人だった。
俺が悪さするたんびにとんでもねぇ雷を落とした後、必ず苦笑いしてため息つくと言ったもんだ。

「きみにはここは狭すぎるのだな。神は人に進むべき道を示されるが、きみには大いなる回り道が必要なようだ、我が弟子よ」

ペイリン修道士は、読み書きからちょいと俗だが生きていくのに必要な事柄までを、そっくり俺に教えてくれた。
時に古典の引用で、時に施療院の薬棚から、そして時に拳骨で。

10歳の時に俺ゃあ祭壇の燭台かっぱらって、修道院を逃げ出した。
狭い狭い塀の内側で、毎日毎日神様を拝んで暮らすなんざ、バカじゃねぇかと思ったんだな。
神様は有難ぇのかもしれねぇが、ここは俺の居場所じゃねぇってな。
海へ出るつもりだった。
船に乗って、どこでもいい遠いとこまで行ってみたかった。

塀を乗り越えて忍び出ようって俺の背中に、いつのまに忍び寄ったんだか、ペイリン修道士は小声でそっとささやいた。

「やはり行くのだな、我が弟子よ」

燭台背負って、塀に片足ひっかけた中途半端な格好で、俺ゃあまた拳骨が飛んでくると思って固まった。
けれど拳骨は飛んでこねぇで、ペイリン修道士は俺の尻を塀の上へ押し上げながら続けた。

「きみが正しいと信じた道を行け。神は常には共にないかもしれないが、わしは常に共にある。いつか海から戻ったきみの道と、わしの道とが再び交わるよう祈ろう」

ほの暗いランタンの明かりの中で、塀の上からバカ面で見下ろす俺と見上げるペイリン修道士の目があってた。

「そのときはきみの見てきたものをわしにも教えておくれ、我が弟子よ」

俺ゃあ必死で鼻の頭に力を入れていた。
涙があふれちまいそうでカッコ悪ぃと思ったからだ。

「さぁ、行け。じきにマタン(夜半の祈り)だ。バレるといかん」

涙にかすむペイリン修道士の笑顔をふりきって飛び降りると、俺ゃあロンドンの街へと駆け出した。


そんなわけでな。
聖ジョージ旗も、テューダー王家も、俺にとっちゃどうでもいい代物だ。
イングランド王国の覇権だの、国家の威信なんてのも、俺の知ったこっちゃあねぇ。
巨万の富と名声はありゃあ便利かもしれねぇが、別になくても困らねぇ。

ありとあらゆる海を渡って広い世界をこの目で見なくちゃならねぇ。

俺が海へ出る理由はそれだけだってぇお話だ。
posted by ブリアレオス at 00:33| Comment(4) | TrackBack(0) | Story of Hecatoncheir | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月04日

Days of Guns and Smokes

「Ship a hooooooy !」

メインマストのてっぺんで見張りが叫ぶ。

腕は右舷前方2時方向を指している。

「船影は3!まっすぐこっちへ向かってます!」

「よぉし、引き続き見張っとけ!動きがあったら知らせろ!」

マストを見上げて指示を飛ばすと、俺は肩越しに質問を投げた。

「さて、ジョー。今、ライベンの野郎は水平線上に船を見つけた。ヤツの取り付いてるマストのてっぺんまでは喫水からだいたい38ヤードある。連中までの距離はどれくらいだ?」

いきなり質問されたジョーは目を白黒させながら答えを探していたが、なかなか答えは出ないらしい。
ヤツは例の一件以来、「ペインター・ジョー」と呼ばれてる。

「だいたい13マイルだ。11海里、でもいいな。計算なんざ面倒臭ぇ事ぁホセあたりにやらせて、早見表でもこさえて丸覚えしちまえ」

神妙な顔で頷くジョーに、さらに質問を重ねる。

「で、だ。11海里空いてるとなると連中と鉢合わせるまで、どれくらい時間がある?」

「1時間かかりません!」

よぉし、こっちの船の速度を計算に入れて、かつ余計なところは省いて要点だけを答える。
こいつは使い物になる。
俺はニヤリと笑って大きく頷いてやると、大声を張り上げた。

「っつうわけだぜ、野郎ども!全船戦闘配置!抜かりなく支度して、熱烈歓迎といこうじゃねぇか!」

全員がドッと歓声をあげて、バーニィとスヴェンの指示ですぐさま戦闘準備を整えにかかる。
自分も準備に駆け出そうとしたジョーの背中に、俺はもう一度声をかける。

「ジョー、敵さんは3隻らしいぜ。単縦陣形で突っ込んで来た場合の未来位置はどこだと思う?」

言われたジョーは真剣な顔で考え込む。
真面目すぎんのが悪ぃとこだな。
無理も無ぇやな、今回がこいつにゃ初陣だもんよ。

「答えは簡単。全部沈んで海の底さ」

やっとこ、ジョーはいい顔で笑って甲板を駆けていった。
posted by ブリアレオス at 12:57| Comment(6) | TrackBack(0) | Story of Hecatoncheir | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。